ごちそうの謎を解いてしまう


昔々、中学生くらいの頃に友人と旅行誌を広げた瞬間のことを思い出す。
編集者か誰かが、スポットに対してコメントをしている誌面だった。
何の気なく「いいなー、この人たちはいろんなところへ行けて」と喋ったと思う。


10年後くらいにまさかその立場になるとは思わなかったけれど、
答えを出してしまえば、行けないことのほうが多い。

すべてを自分の体験だけで発信するのは危うかったりもする。
そうはいっても、知らないままに伝えることは恐ろしい。

週末に軽井沢へ行った。
5月発売号で担当したエリアなのだけど、訪れたことがなかった。

イメージ通り、森の中の一軒家カフェも、緑に囲まれた温泉もあった。
でも私は、現地で記事に書いたような乗馬やヨガはしなかったし、
作ったにもかかわらず、軽井沢に賑やかな商店街があることも知らなかった。

あの4Pは、でも、しっかり作れたかもと、ちょっとだけ自分を褒める。

公私混合はおもしろい。週末は仕事のために遊びたいと思う。
平日は遊ぶために仕事をしたいとも思う。

なんだかんだと出かける機会は多い。

撮影へ行った北鎌倉。漢方ごはん料理教室の先生がとても素敵だった。
元リクルート→フリーライター→漢方のお店を開業、という経歴で
バリバリのゴリゴリでものすごく明るくて、さわやかな方だった。

「同期と会うと驚かれますよ。当時の私って、一匹狼で、トゲトゲしてましたから」

そうかあ。いいなあ、と思う。





7月発売号が終わってひと段落。
きっと発売するときにはすこし泣いてしまうほど、ちょっと苦しかった。

去年の夏に出会った、バリバリのゴリゴリな広告マンの言葉を思い出す。

「僕はただ、みんなと違う筋力をつけてきていただけですから」

彼が作ったアイルトン・セナの広告は、広告志望の学生と話すとよく話題にのぼる。
私は彼のこの一言に何度も救われているので、ふさわしい感情で喋ることができない。


最近あまり読書が進まないのだけど、角田光代さんのエッセイはやっぱりたまらない。
ごちそうの謎を解いてしまう。
角田さんは見たこともない料理をごちそうだと思い、友人宅で出てきた「ごちそう」のレシピを聞いてしまうのだとか。
ごちそうの謎を解いてしまう。
これだけでご飯一杯わたしはいける。いい表現だなあと思う。



明日は健康診断で、水しか飲めない夜を呪うけれど、
そんな中、明日の夜の予定が流れてしまってかなしいけれど、
今日は給料日だったし、がんばれるかなーと
やめるはずだったたばこを吸っている。