TSUTAYAは退屈の特効薬

「特別嫌なことがあったわけじゃないけど、なんか元気が出ないんだよね」とこぼした時、「最後にTSUTAYA行ったのいつ?」と返した友人がいる。

TSUTAYAは元気の源だから毎日毎週行け、などという意味ではないことくらい、わかる。よほどの映画好きや音楽好きでなければ、毎日新しい映画を見ることはないし、 毎週新譜をチェックすることもない。おそらくそんな人たちは、店舗に行かなくたって欲しいものを手に入れられる術を使っているだろう。

だけどあんな風に、目移り気移り、練り歩いて「いいなーこれ」って手に取っては戻し、何往復もするような。そんなような時間と体力をかけて新しい映画や音楽に出会うことは、たまに必要だと思う。
他の人はどうだかわからないけれど、わたしはあそこでお目当てだけを手に、レジに直行したことがない。

TSUTAYAでは、この間誰かがカラオケで歌ってた曲を思い出したり、「観たいなー」と思ったまま劇場に足を運ばず忘れかけていた映画のDVDを見つけたりする。予定が早く終わったときや、なんだか寄り道したくなったときに吸い込まれたりする。

思春期の頃から寄り添っているような「わかる」ジャンルの棚の、年月が経つ程にラインナップが変わっていくさまは、いかにもさびしい。「わからない」ジャンルの棚は、いつまで経ってもわからない。きっかけがあれば、あれば、と思いつつ一瞥。わたしもR&Bのコーナーで物色してみたいとひとりごちる。 ごちるだけ。店員が書いたポップを読んでもさっぱり頭に入らなかった。

会計をする頃にはなぜか少し体が熱くて、疲れている。帰ったら iPodに曲を入れなきゃならない。映画を観るなんていう有意義な時間づくりのために、リラックスした服に着替えて美味しいツマミを用意したりすることもある。もう一度店舗に行って返さなくちゃ。あるいは、普段使わない「ポスト」へ投函しなくちゃ。

そうして、今までどんなに退屈だったろうかと思う。