詐欺師に言われた「人の言葉に耳を傾けるな」

この間、易者を名乗る年配の男性に出会った。ツボを売られたり宗教に勧誘されたら逃げればいいかと思い見てもらうことに。なんだかんだとタイミングを失い、結局半日近くも一緒にいてしまった。別れた後名前をぐぐってみると、5年前に詐欺容疑で逮捕されていたことが判明。Facebookに投げて、いいね!の分だけ、あの時間が無駄ではなかったという慰めを感じたのだった。

彼はおそらく、人を騙すことで生計を立てている。幸いにも私はお金を盗られることはなかったが、彼自身仏壇や水晶を売ることがあるとも公言していた。「見るだけじゃお金貯まんないからね」なんて、人を騙すというのは実に簡単だと言うようだ。特に易者なんてホイホイ釣れるだろう。「俺の前には悩んでいる人しか来ないからさ」という一言が物語っている。

易学というものに私はめっぽう疎く、女性の中でも興味がない方だと思う。一度だけ仕事の関係で上野の占い師に見てもらったことがあるけれど、「改名したほうがいいわよ」で終わった。血液型なんてもってのほか、タロットは偶然だし、星座は範囲が広すぎるし、手相はボールペン1本で変わる。唯一姓名判断や生年月日というのが「マトモ」かなあ、ぐらいだった。

詐欺師の彼曰く、姓名判断というのは人の運命の6割を決めているそうだ。2割が生年月日、 残りが手相や人相などという。女性は結婚して苗字が変われば当然運命も変わると。易学の本やグッズなどをたくさん見せて来たので、疎い私は「へえ〜そうなんですね」と信じ込んでいた。こんな性分なので、こんな時にしか見てもらう機会がないと思ってけっこうノリノリだったのだ。

人を騙す詐欺師という名の業とはいえ、彼がそのために易学を齧っているのは言うまでもない。今思い起こせばデタラメな部分もなきにしもあらず…だが(ああ確かに私○○の部分あるんですよー、という言葉に、そういう相出てるよ、などという)。ただし彼の怖いところは、私の恋愛に関する様々なことを大体言い当てていたことだった。Twitterで呟いた時に「私も占ってほしい」という友人がいたので電話越しに紹介したら、彼女もその類いをぴしゃりと当てられたそうだ。結果、ちょっと怖いことになってしまった。

詐欺師いわく、私の姓名判断の結果は 「非常に運気が強い」だそうだ。高原と千晴の相性が良過ぎて、それを越える苗字の男性が現れない限り、結婚は難しいとまで。30歳以降は確実だと。ははあ、そうですか。恋や性行為を浴びる程楽しみなさい、どうせ全部上手くいかないんだから、高原が強過ぎて。ははあ、そうですか…。

特に強いのは仕事運。自分がやりたいと思ったことをやりきれ、人の言葉に耳を傾けてはいけない。自分だけ信じれば道は開ける。
婦人病と腰に気をつければ君の人生は良いものになる。

詐欺師だと分かっていても、なんだか耳を傾けたくなることばかりだった。ただし「乳がんの気があるんじゃないか?」っておっぱい触られたのだけはまじ許すまじ。まじ許すまじ。