松山に来て10日

東京から800km以上離れた愛媛県松山市
親戚や知人がいるでもなく、本当に縁もゆかりもない街。
瀬戸内海、みかん、坂の上の雲。人口だけで言えば町田より少し大きいくらいの、そんなような街に住み始めて10日ほど経つ。

来て良かったと、改めて思う。

この10日間は生活を整えることで精一杯だった。慣れない昼夜逆転生活、覚えたての仕事、久しぶりの自炊生活、住居の移転、勝手の分からない街。ネットを繋ぐ時間がぐんと減り、あっという間に働き詰めの日々へ。

最 初は道後の安宿に泊まっていたのだが、同居人と昼夜逆転で会えなかったりセキュリティに問題があったり賃貸が安かったりしたので、ワンルームを借りること になった。19800円の私の城は、市ヶ谷に住んでいた時より少しだけ小さいくらいだ。若者の1人暮らし用の部屋で2万円台なんてごろごろあって、3万出 せばいいところに住めて、4,5万もあれば「親からいくらもらってるの?」という具合だと聞いて驚いた。しかしまあ、ふとコンビニのアルバイト募集を見れ ば、時給は660円。1.5倍の時給をもらえる私の街でも、家賃は3,4倍するので割にあわないなどと考える。

松山のBARで働いてい る。そりゃもう、14時間ぐらい働いている。掃除して仕込みしてグラス洗って接客して、動きっ放しだ。空いた時間や閉店後にお酒を作る練習をする。カクテ ルはもちろん、ワインやチーズの品種を覚えたりするし、ビールの多様性を学んだりもする。店で人気な葉巻を吸ったりもしている。知らないことだらけ、分か らないことだらけで、最高に楽しい。マスターも従業員さんもアルバイトの大学生も、本当に素敵な人ばかりだ。来る前から分かっていたけれど、一癖も二癖も あってネタが止まらない。突然門を叩いた見ず知らずの私を受け入れてくれたマスターには、頭が上がらない。だから、一生懸命に働いている。馴染むようによ く喋り、よく笑い、興味を持ち、努力をしている。教えてもらうというのは尊いことだから。

私が休学していなかったら、こんなにどっぷり浸 かることはできなかった。学生生活をしながらアルバイトでこなせることじゃない。遠く知らない街で働くことだってもちろん無理だ。「卒業してから」付き纏 う世間や社会を気にせず生きて行けるだろうか。お金は? 特別将来のことは考えていないけれど、自由な振りをして生きていたくはないなとは思う。

抽象的な好きから具体的な好きへ。色んなお酒を飲む度に、どちらがより好きかを考える。強くこだわりは持っていなくてもいいから、良さを知って飲み込んでいきたい。丁寧にこなそう。来週もがんばろう。

さよなら日曜日。おやすみ。