高円寺の歩道

高円寺には数えるくらいしか降り立ったことがないし、その時々も連れられてばかりなので勝手がわからない。
ほとんど憧れのような、わたしには似合わない街だろう、という気持ちがある。
おしゃれで飄々としていて自意識をこじらせた人たちだけの街。中野より向こう側には大きな壁がある。

高円寺のことを「だめな大人の集まり」と形容していた男性がいた。
改札を出てすぐ、奇抜で小柄な彼はよく目立った。真っ先に見つけられた。
連れられるがままこれまたおしゃれなカフェでお酒を飲んだりご飯を食べたりしたことを覚えている。当然名前も場所もわからないから、もう辿り着けないと思う。ガパオが美味しかった。

思い出すのは彼がよく歩道と歩道の境目でつまづいて恥ずかしそうに笑う映像だけだ。本当によくつまづく人だった。高円寺においで、と言ってくれたときは、たまらなく嬉しかった。